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10月号 2017.10.1
啓林堂書店 http://www.books-keirindo.co.jp
木から学ぶ教えとは
「木の教え」(ちくま文庫)  木の奥深さに唸った一冊を今月はご紹介。木目の表紙が目をひく「木の教え」(ちくま文庫)である。
 内容としては、法隆寺最後の宮大工棟梁・西岡常一が代々伝えられてきた口伝を一般に公開した内容をはじめ、著者が舟大工などから聞いた木にまつわる話を書籍としてまとめたものになっている。

 皆さんはヤリガンナ、という道具をご存じだろうか?
 これは古い鉋のこと。私たちがよく耳にする鉋は台鉋(だいがんな)のことだ。実は台鉋、まだ登場してから歴史は浅い。世界最古の木造建築物として知られる法隆寺が建てられたのは飛鳥時代。まだ台鉋はなかった。では、どうやって柱や床を平らにしていたのか――ここで登場するのが冒頭のヤリガンナである。
 一見曲線のゆるい小さな鎌といったフォルムをしているヤリガンナ。これで平らにできるのだろうかと思うが、宮大工は伝統の技でもって平らな床に仕上げていく。今でも修復する必要のある古い建物などは、建立当時の姿をできるだけ再現するため、このような昔の技法が使われているのである。見た目には平らに見える木の板も、ヤリガンナのカーブに合わせてよく見るとさざなみ模様になっているのだそう。触ってみると更に明白で、真っ平らという言葉は人間が勝手に言っているだけだという著者の指摘は、実物を触って確かめてみたい衝動に駆られる。

 製材された木。だが、これらもみな一様に同じではない。本書では敬遠されがちな節の部分の活用方法や、より木を長持ちさせるにはどうしたらいいかといったような工夫も紹介されている。中でも興味深かった2つの話を挙げておきたい。まずは木の保存方法。木はひび割れを防ぐため、乾燥の過程が必須なのだが、それとは真逆に数年水につけて置いておく保存方法があるのだそう。そんなことをして木が腐らないのかと心配になるが、実際腐ってなくなるのは脆い白太の部分のみ。赤身の部分だけが残るため却って木は丈夫になり、水から上げた後は乾燥も早いのだそう。もう一つの話は伊達政宗と船の話。戦国時代に詳しい方は伊達政宗がサン・ファン・バウティスタ号という船をつくったことをご存じの方もおられるかもしれない。興味深いのはこの時作られた船、普段は材木として見向きもされない木のある部分が使われていたと言う。適材適所、がしっくりくる話になっている。

 著者の現代社会に向ける目は厳しい。木だけでなく人も皆同じように扱い、コスト削減、時間削減に勤しむ効率第一主義では、せっかくの宮大工の口伝も生かすことができないからだ。木も人もそれぞれ癖がある。だがその特徴は適材適所で生かすことにより、持ち味を最大限に引き出すことができるのだ。幹を右にひねろうとする木があれば、反対に左へひねろうとする木と一緒にすることで建物は何倍も強くなる。法隆寺を現代の私たちが見ることができるのは、このような木一本一本の特徴をつかみ、生かそうとする宮大工の姿勢があればこそ。
 現代社会では、木を全て同じように扱うことで、製材も早く完了し、すぐに綺麗な建物ができてしまう。一見それでいい気もするかもしれない。だが時間が経つにつれ、じっくり癖を見ることなく製材された木は、次第に「暴れる」ようになっていくのである。
 さて、木が「暴れる」とはどういうことだろう、と疑問に思われた方。これは本書全体を通して、木を製材する時に欠かせない視点となっているので、ぜひご自分の目で確認してみて欲しい。ただ、効率的に見える事も、長い目で見れば非効率になることもある。そのことを私たちは忘れてはならないだろう。

 薄い文庫本ながら、読み応えたっぷり。読み終えた後は、法隆寺に行って宮大工の技をこの目で確かめたくなるだろう。おすすめ!
今月の私の1冊
「教養は児童書で学べ」
【光文社新書】 出口治明 著 \907
教養は児童書で学べ 小さいころに読んだ絵本や児童書。昔読んだ時と今とでは印象が変わったということ、皆さんも経験があるのではないだろうか。
「はじめに」で著者がのべているが、子ども向けの本にはごまかしがきかない。子ども達の本質を見抜く目は、大人よりもずっと鋭いからだ。だが、児童書は決して子どもの気持ちにならないと楽しめない本ではなく、子どもが子どもとして楽しめるのと同様に、大人も大人として楽しめる本でもあると言う。例えば「せいめいのれきし」の登場する章。実は2015年に改訂版が発行されている。本書では旧版と改訂版の比較がされていて、「進化論」の進化が読み取れるようになっているのが興味深い。また、皆さんもよくご存じ「はらぺこあおむし」は、ページにあおむしが食べものをかじった跡の穴が開いている。実はあの穴、あることを想定して絶妙なサイズになっているのだが…。
よくできた絵本ほど、時間をかけて丁寧に作られているのがよくわかる。読めば紹介されている絵本をきっと読み返したくなるだろう。
今月の私の一冊
ミニコラム「私と本」
≪今月の担当≫ 商品部 部長 佐藤篤志
 「読書の秋」とはよく言われるが、由来については深く考えたことが無く、ふと調べてみると漢詩や読書週間など諸説あるようだ。
 「灯火親しむべし」 確かに虫の音を聞きながら秋の夜長にゆっくりと本を読むのはなかなかに気持ちがよいものである。親しんで手に取る好きな作家やジャンルの本は勿論のこと、見知らぬ本をじっくり味わうのもひとつの楽しみといえよう。
 今年の秋は是非新しい本に出会ってみたいものだ。
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 読書の秋! いつもと違うジャンルに挑戦しようかとただいま画策中です。
 
◆外商部おすすめの児童書・奈良本のご紹介◆
啓林堂書店ホームページ・外商部ページ(http://www.books-keirindo.co.jp/gaisyoubu.html)にて、
更新中の「外商部おすすめの奈良本」「おすすめ児童書」をご紹介!
 
 
□ おすすめ児童書 おつきさまはまあるくなくっちゃ
『おつきさまはまあるくなくっちゃ!』 【大日本図書】 ふくだじゅんこ/文・絵
ある晩、空を見上げたおばあさんはおったまげた!! お月さまが・・・・・・ほそーい!
おばあさんはまあるいお月さまにしようとせっせと料理を作り食べさせます。
お月さまはまあるくなれる?
 
 
運慶写仏 なぞって描けば祈願成就 □ 外商部おすすめの奈良本
『運慶写仏 なぞって描けば祈願成就』 【朝日新聞出版】 田中ひろみ/著
「心やすらぐ仏像なぞり描き」が大ヒット、“仏像なぞり描き”ブームの火付け役として、テレビやラジオ番組で紹介されている、いま話題のイラストレーター・田中ひろみの第6弾! 運慶が造った仏像・全31体を完全網羅するだけでなく、如来・菩薩・明王・天など4種類ある仏像の基礎知識や、運慶仏の背比べ、運慶仏に会える寺社ガイドまでついています。
 
 
「おすすめ児童書」・「おすすめの奈良本」10月号は、10月初旬に更新予定です! お見逃しなく!!
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