啓林堂書店 メールマガジン

     
啓林堂メールマガジン
7月号 2011. 7. 1
啓林堂書店 http://www.books-keirindo.co.jp
知の巨匠 「ウメサオタダオ展」にみる整理整頓の精神!
『知的生産の技術』(梅棹忠夫著)と『「超」整理法』(野口悠紀雄著)の狭間で整理術を模索中
 3月10日から6月14日まで、万博記念公園内にある国立民族学博物館で梅棹忠夫氏の特別展「ウメサオタダオ展」が開かれていたが、行かれただろうか。新聞紙上でも頻繁に特集が組まれたりしていたことと、私は氏の著作では唯一『知的生産の技術』(岩波書店)を読んだだけではあるが、とても興味があったので、閉幕間近の6月12日に行ってきた。梅棹氏の人物像や功績などは多くの方が論じておられているし、小難しいことや専門的なことはそちらにおまかせするとして、一主婦の目で見た感想を述べたいと思う。

 ある程度予想はしていたが、展示されている資料の数の多さと内容、貪欲な探究心とその行動力が半端でないこと、そして何においてもとにかく「まめ」で几帳面であるということに感心させられた。『知的生産の技術』で紹介されている京大式カード、オープンファイル、こざね、フィールドノート、それから手紙(受け取った手紙と、自身が出した手紙のコピー)など、それはお見事というしか言いようがないほどきちんと整理整頓されて保存されている。同書の「整理と整頓」の項に書いてあった《整理の第一原則はものの「おき場所」をきめるということ、その「おき場所」のきめたかは、体系的でなければならない。おき場所がきまったら、そのおき場所を守らなければならない。つまり、とりだしたら、あとはかならず、もとの位置に「もどす」。これがつぎの原則である。》というその言葉通りになっていて、書斎の机の上やアタッシェケース(アタッシュは間違い、正しくはアタッシェ)の中も、そのおき場所はきちっと決められていてわずかのずれも気にしたという。なるほど、こういうことだったのかと納得すると同時に、今はやりの断捨離に通じるような気がして、「やるなあ、梅棹さん」とか「さすが、梅棹さん」などと、心の中でつぶやきながら館内を見て回った。残してある手紙も、著名人や知人だけでなく、一般読者からの読後の感想を書いたものも丁寧にとってあって、誠実さ、ドラッカーのいう真摯さも伝わってきた。また、ご自身が書いた手紙のコピーの中で、佐藤栄作総理大臣に宛てた、万博の跡地に博物館をたてるにあたっての陳情の手紙は興味深く、こんな風に書くのかと読み入ってしまい長い時間その場所を独占してしまった。


 さて、梅棹氏の『知的生産の技術』を参考に私も切り抜いた新聞記事の整理をしようと思ったが、秘書や助手がいるわけでもなく、普通の主婦には無理な話。そんな時に出会ったのが『「超」整理法』(野口悠紀雄著・中公新書)だ。これは、整理は分類からではなく、時間軸で管理するという方法。なるほど、分類するのに手間がかかるのは事実で、この方法はただ日付けごとに同じ日に入手した情報をまとめて一つの袋に入れて、時系列で並べていくだけなので簡単である。但し、後になってその中の資料が必要なとき、過去のいつにその記事が載っていたかを探すのが大変。だいだいいつごろというのは最近のものはわかるが、数ヶ月前とかになると明確な日にちは覚えていない。よけいに時間がかかる。野口氏は長い間見ないものは必要としないものだから、執行猶予期間を決めて処分していけばいいと言うが、私の場合、新しいものばかりが必要とは限らない。はて、どうするか……。『知的生産の技術』と『「超」整理法』などを参考にしながら、自分が一番使いやすい方法を見つけるのが最善なのではないかと思う。使うのは自分なのだから決めるのも自分で。それしかない。断捨離貫徹まで、まだ時間がかかりそうだが、この途中を楽しみたい。
◆今月の私の1冊◆
「本の運命」
井上ひさし
(文藝春秋) 税込価格 490円
インフォメーション4月号で一度紹介させていただいたこの本、先月6月25日に奈良県立図書情報館で行われたビブリオバトルでチャンプ本に選ばれたので、再度紹介させていただく。

本と共に生きてきた井上ひさしさんの半生と、13万冊の蔵書が繰り広げる壮大な物語。本好きの人の気持ちを代弁してくれているかのように、本との出会いは一期一会のようなものと熱く語り、「買おう」と思ったときにすぐに買うのが鉄則と説いている。
本を買いたいと思うときは、その本がこっちのどこかに訴えかけていて、その訴えをきいてあげると、あとで必ず恩返しをしてくれると…

本の重みで家の床が抜けたことや、上智大学の図書館員とのバトルなどのエピソードも読んでいて楽しい。
今月の私の一冊
eventnews
■寮美千子 講演会&サイン会
7月16日(土)14:00~
啓林堂書店奈良ビブレ店にて
奈良発、少年刑務所のドキュメント
「空が青いから白をえらんだのです 奈良少年刑務所詩集」
文庫本発刊記念
心を閉ざし、気持ちの行き場をなくした少年達が寮さんと出会い、詩作 活動を通してどのように変わっていったのか…
一人でも多くの方にきいていただきたい講演です。
*詳しくは弊社ホームページをご覧ください。
Chat&Chat
井上ひさしさんも、上記の「本の運命」の中で『知的生産の技術』に触れている。情報をどうやって整理するかに悩んだときに読んだそうで、この方法をやりかけたがやはり問題が生じてやめたとある。ずいぶん失敗したあとに最後にたどり着いたのが、大きめの手帳に書き抜いていく方法だとか。一年で5,6冊になるが、不思議と「あれは3冊目のあの辺にあったかな」と覚えているらしい。それは、人の手に寄らず、自分で文章を書いたからなのだろう。 本には井上さん手書きの独特の丸っこい文字が書いてあった。面倒がらず手をかけることの大切さを学んだような気がする。(MH)
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