8月号 2025.8.1
啓林堂書店 https://books-keirindo.co.jp/
今回ご紹介する本は、「記憶にありません。記憶力もありません。」(文春文庫)。ヨシタケシンスケの絶妙な脱力感が伝わる表紙もさることながら、タイトルの引きの強さから思わず手に取ってしまった一冊だ。
著者は土屋賢二。哲学者のエッセイ、と聞くととても敷居が高いように感じられるが、内容は想像しているものとは全く異なり、ユーモアにあふれる楽しいものとなっている。
スキマ時間に少しずつ読み進めようと思っていたのに、気づけばあっという間に全編読破。本を読む手を途中で止められなかった。最初から最後までずっと笑えるのだが、思いがけないところで不意打ちにあって吹き出しそうになるため、電車の中で読むのはあまりオススメしない。
タイトルにちなみ、「まえがき」に登場しているのは記憶力の衰えの話だ。
記憶力がなくなることは悪いことばかりではない、記憶力がなくなるとトラブルの大半は回避できる――まじめな話がつづくかと思いきや、思いがけない方向に話は展開していくことになる。なお、本書を買ったことも忘れるよう著者は薦めている。以下本文抜粋。
“本書を買ったら、忘却力を発揮して、買ったことを忘れていただきたい。そうすれば、購入時の喜びを何度も味わうことができる。これこそ最高の読書の楽しみ方だ。
なぜかというと、何事も、必要なものを買うときほど、心ときめく瞬間はない。(中略)本書を購入したときの喜びをいつまでも味わうために、購入したことはさっさと忘れ、すぐに再購入することをおすすめする。”
流石に同じ本を二冊買うつもりはないが、著者の他の本を今読みたくて仕方がない。本書に収録されている話を読むと、日常の悩みや失敗は全部プラスに捉えられる気がしてくるから不思議だ。
収録されている話の中でも、著者の教え子が登場する話がいずれも面白くて気に入っている。遠慮ない鋭い切り返しに思わずにやにやしてしまうのだ。
「大谷選手と瓜二つ」の章では、大谷選手と瓜二つを主張する著者と反論する教え子の構図が展開される。
そもそも何を持って瓜二つとするのかが問題なのだ。著者の理論で行けば、著者に限らず皆、大谷選手とは瓜二つということになる。いや、大谷選手に限らず。勿論マリリン・モンローも例外ではない・・・
気づけばすっかり「ツチヤ本」の虜。ツチヤGPTが商品化された暁には、本書でのスペック完全再現が望めるなら普通に欲しい。日常が楽しくなりそうだ。くわしくは「ツチヤGPT」の章を確認! おすすめ!
「なんとなく言語学」
【くろしお出版】
本田謙介/原案・著 田中江扶/著 畠山雄二/著 はやのん/イラスト
どうにもクラシックは敷居が高くてとっつきにくい……そんなイメージをお持ちの方にこそ読んでいただきたい一冊がこちら。 CMやドラマ、家電に収録されているメロディなど、私たちの生活に溶け込んでいるクラッシック曲を作曲家の歴史や誕生秘話を交えて数多く紹介されている。 「鼻から牛乳」のあの曲、「お風呂が沸きました」のあの曲……曲名を知らなくても、「ああ、この曲なら知ってる!」となるものがほとんどなのだが、もしすぐにピンと来なくても大丈夫。紹介ページに、QRコードがついているので、気になった音楽がすぐに聞けるよう配慮されている。 私のおすすめは「きらきら星」のページ。意外な歴史が知れる。
≪今月の担当≫ 外商部 社員 上田輝美
なんとなく気になっているのに、手を出せずにいる本が多い。
理由は様々だが(いや99%は自分の気分が乗らないというだけだが)、ぐずぐずしている間に気になっていた本が瞬く間に売れ、話題になってしまうと厄介だ。気になるセンサーがしぼんで元気がなくなる。今更読まなくてもいいかなと思ってしまう。急に冷めてしまうのは何故だ? 単に私がひねくれているのだろうか?
だが例外がある。ロングセラーだ。一過性のはやりを超え、ロングセラーになったと聞くと、気合を入れてぜひ読まなくては! と気分が変わる。
電子化、ウェブ媒体が当たり前の現代だからこそ、紙の本として少しでも長生きして欲しいなといつも思っている。
本屋に入るといつも時間が一瞬で消えてしまうのが不思議です。ひとまずぐるっと店内を一周、これだけで一時間。次に新刊コーナーを吟味……三十分経過。次に気になった棚を再チェック……そんなこんなで、満足感MAXでお店を出ようと思うと、最低二時間は必要だというのが私の体感です。気になる本が多すぎるのかも。
◆外商部おすすめの児童書・奈良本のご紹介◆
啓林堂書店ホームページ・外商部ページ( https://books-keirindo.co.jp/gaisyoubu/ )にて、更新中の「外商部おすすめの奈良本」「おすすめ児童書」をご紹介!
おすすめ児童書
『くだもののはななんのはな?』
【岩崎書店】宮崎祥子/構成・文 網野文絵/写真
果物がなる前にどんな花が咲くのか、教えてくれる写真絵本です。 花の写真のページをめくると果物の写真が出てくるので、みんなで当てっこができます。 文章にもヒントが隠れているので注意してね。 果物が実になる過程もわかり、へえ~、そうなんだという気持ちが湧いてきます。
外商部おすすめの奈良本
『畿内近国の城郭と縄張技術』
【戎光祥出版】金松誠/著8月5日発売予定
大和国を中心に、文献史料に基づき中世から近世初頭における城郭の成立と展開、収斂していく過程を一国レベルで具体的に検討。また、畿内近国の陣城や臨時的城郭を中心に戦国期城郭と織豊系城郭の併存・移行期における縄張技術のあり方とその年代観を探り、戦国期城郭と織豊系城郭のあり方について追究する。
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