人にはそれぞれ、得意なことと苦手なことがある。
勉強や部活動、習い事、趣味などを通して、私たちは様々な経験を積むことになる。褒められたり、自信をつけたことは何度もチャレンジするし、あまり評価を得られず、自信を持てないことは避けるようになる。その結果、よく使われる脳の部位とそうでない部位ができ、よく使う脳の部位はどんどん強化されていく・・・そんな脳のアンバランスさが私たちの個性となっているようだ。
今回ご紹介する本は『イラスト図解 脳とココロのしくみ入門』(朝日新聞出版)。
面倒なことをついつい先送りにしてしまうのはなぜ? マルチタスクがこなせない! など、私たちが日常で遭遇する様々な問題や疑問を、本書は脳科学の視点からひも解く。
大脳で特定の領域が特定の役割を担当するという考えを「脳機能局在論」という。著者はこの考えをもとに、脳のさまざまな概念をわかりやすく伝えるため「脳番地」という言葉を用いて説明する。
日常でよく使われる脳番地を、思考系、感情系、伝達系、理解系、運動系、聴覚系、視覚系、記憶系の8つに分け、それぞれの働きから日常の疑問を解説していく。少し例を上げてみる。
お腹は空いていないのについ手が伸びて・・・空腹ではないはずなのに、おやつを食べてしまった! こんな経験が皆さんにもあるのではないだろうか。
これは一つのことを考えてイライラしていたり、長時間座りっぱなしになっているときに起きる現象。脳の覚醒が落ちると、脳は何か違うこと、特に運動系を使いたくなるのだそうだ。この時使う筋肉に注意。口だと「食べる」という行為になってしまう。これがお腹は空いていないのに、食べてしまう理由だ。伸びをしてみたり、ストレッチしてみたり。できれば意識的に口ではなく、体の違うところを動かすように注意したいものだ。
どうして地図が読めないのか? 地図を見ていても目的地にたどりつけない・・・心あたりのある方もいらっしゃるのではないだろうか。 地図は視覚系と記憶系の脳番地を使うそう。映像記憶が必要とされるのだが・・・ポイントは方向ではなく方角にある。
どうやら地図を読むのが苦手な人と、得意な人では見ている視点が違うようだ。詳細はぜひ本書でご確認を。
他にもマウンティングしてくる人、だれかれ構わず怒る人・・・など、周りで見かける困った人の行動の謎にも迫る。脳の動きが、ココロの動きを作っているのがよくわかる。
人間の脳にはまだ解明されていないことがたくさんあるため、いち仮説ではあるが、大変興味深い内容だった。おすすめ!