私たちの日常には番号が溢れている。電話番号、郵便番号、車のナンバープレート、お好きな方であれば野球選手の背番号、というのも浮かぶかもしれない。最近であればマイナンバーなど、身近な例を見渡してみても枚挙にいとまがない。我々の生活はそれほどまでに番号と密接に関わっている。
一元管理をするために振られたこれらの番号は、一見無味乾燥なイメージで受け止められがちだ。だが本書『番号は謎』(新潮新書)は、その番号が誕生した経緯、運用のされ方などを読み解いていくことで、背後にある意外なドラマを教えてくれる。
例えば電話番号。昔は東京と大阪では桁数が9桁、その他の市は10桁の番号だった。そのため昔は番号が多いと田舎者だと揶揄する向きもあったようだ。だが時代を下るにつれて使用される電話番号が増えて行き、空き番号の残りが少なくなってきた。全ての番号が10桁となるも追いつかず、この問題を解決すべく取られたのが、市外局番の末尾を市内局番の頭に押しやるという面白い方法であった。番号自体は変わらないが、市外局番の末尾番号が一つ減り、代わりに市内局番の頭番号が一つ増える。それだけで使える番号が増えるとは…? これは電話番号のとある法則による。
また、市外局番はひとつ、または複数の自治体のに集まりに対応していることが多いのだが、はみだし市外局番も存在している。これは電話回線が我々の生活に根差しているがために起きた違いなのだが…思わず地図を引っ張り出してきて確認してしまった。納得の答えは本書にて。
また、今ではすっかりおなじみの郵便番号。これは郵便システムの合理化を推し進めるために旧郵政省が注力したものである。当時深刻になりつつあった郵便物仕分けの人手不足を解消すべく、郵便物の振り分けを機械で自動で行えるように動いたのがそもそもの始まりだ。封筒やはがきの上部には現在郵便番号を書き込む赤いマス目が並んでいるのが主流だが、これはその時の働きかけから登場している。
郵便番号が面白いのはそのナンバリングの法則だろう。頭の00が札幌市から始まり、通常ならそのまま北から順に南下してきそうなものなのだが、郵便番号の場合は01秋田、02岩手、03青森とつづいたあと、04から09は北海道に戻り、10番台はなぜかいきなり東京に飛ぶ。当時の郵便事情を反映した面白い理由が述べられているので、ぜひ注目してみて欲しい。
さらに鉄道からは駅のホーム番号が紹介されている。○番線、とされる番号の振り方は駅長室に近い方から1番線、2番線…と始めるのが一般的なようだが、規則で決まっているというわけではないらしい。なお、0番線があるのに1番線がない!? といった不思議な駅も紹介されている。欠番が生じる理由とは? なおハリー・ポッターに登場するキングス・クロス駅は、ハリーたちが魔法学校へと向かう9と3/4番線のホームで知られているが、観光客向けの案内板はあるものの架空のホームなので残念ながら実在はしない。
法則通りであれば分かりやすいところ、様々な配慮がなされた結果、複雑怪奇な様相を見せる番号たちが数多く紹介されている。番号についてここまで体系的にまとめた本は珍しい。本書を読み終える頃には、すっかり番号の虜となっていることだろう。