連日取り上げられる新型コロナ関連のニュースにより、生活の中の衛生について考える機会が多くなっている。そんな衛生全般について、分かりやすくまとめられた児童書が刊行された。
『こども衛生学』(新星出版社)、本書によると、「衛生」とは、いのちや生活をまもるという意味なのだそう。
本書では感染症予防の考え方や、食べ物の安全など、子どもにも身近な話題を中心に、衛生学の基本が学べる内容となっている。
「衛生」のはじまりは、都市が発達し、貿易などで人の往来がさかんになったときに発生したコレラなどの伝染病の流行防止からだ。汚い水や大便・小便の処理など、生活環境を清潔にする運動から健康を守る取り組みが始まった。環境浄化運動から始まった衛生の取り組みは、その後「衛生学」としてまとめられることになる。
なお、「衛生」という考え方自体は約4000年前からあったと言われている。古代エジプトの遺跡から、浴室や排水管、排水溝が発見されており、紀元前2100年頃には手を洗う習慣があり、人々が衛生面に注意を払っていたのが分かっているのだそうだ。日本においても、まだ「衛生学」の考えが確立していなかった江戸時代、江戸などの都市部でコレラなどの伝染病対策に取り組んでいる。主に飲料水を確保するための上水道の設備、清潔を保つための公衆トイレの設置、また、井戸を共同で管理するなどしていたという。
昔から人々は健康を脅かす問題や原因と常に向き合ってきた。第1章以降は、現代に生きる私たちの暮らしに関わる衛生学について、理解を深めていくことになる。
コロナが猛威を振るう中にあって、最近はどこへ出かけるにもウエットティッシュがないと落ち着かない、そんな方も多いのではないだろうか。だが、表記でよく見かける「抗菌」「除菌」「殺菌」、実はそれぞれ少しずつ意味が異なっている。
本書、「おしぼりで手をふけば、菌はなくなる?」の項目をご覧頂きたい。31ページに、「菌をなくすレベル」順に、わかりやすくまとめられた表が掲載されている。実は菌を完全に殺すのは「滅菌」と書いてあるものだけ。当然おしぼりで手をふいたくらいでは、菌は減らすことはできても、完全になくすことはできない。だが菌がなくなればいいかというとそうではない。薬品が強くなるとその分、物や肌への刺激も強くなってしまう。私たちは望む効果を確認した上で、これらを適切に使い分ける必要があるのである。
また、初歩的だがとても大事な「手あらい・うがいはなぜするの?」という項目。手洗い・うがいには、病原体が体に入るのを防ぐ効果がある。
手洗いの効果はすさまじく、水で15秒洗うだけでも、ウイルスの数を約100分の1まで減少させることができる。ハンドソープを使って手を洗うと、ここからさらに100分の1、ウイルスの数を減少させることになるのだそうだ。正しい手洗いをすることで、手に付着しているウイルスの数はぐっと減る。本書では念入りに洗った場合のそれぞれの調査結果もまとめられているので、ぜひご確認いただきたい。
小中学生向けにまとめられた児童書のため、分かりやすく優しい表現でまとめられているが、網羅している範囲が広く、大人が読んでも勉強になる。今更聞けない基本もこの一冊がきっと解決! まずは気になった項目から、読み進めてみては?