「京大変人講座」とは、京都大学発の、京大に連綿と受けつがれている「自由の学風」「変人のDNA」を世に広く知ってもらうため発足した公開講座のことだ。(京大で変人はホメ言葉である。)本書はその人気の授業を書籍化したものである。(三笠書房刊)
サービス経営学、法哲学、システム工学など、様々な分野の先生の話はどれも一風変わっていて面白い。
特に面白いと感じた話を次より少し紹介してみたいと思うが、関西気質を感じられる序章のダイアローグとディベートの違いの話などもかなり楽しい内容となっているので、読み飛ばさず、ぜひ冒頭から読んでいってみて欲しい。 まず、第1章の『毒ガスに満ちた「奇妙な惑星」へようこそ』。章タイトルに思わずびっくりしてしまうが、これは地球のことである。
私達が生きていく上で酸素の存在は必要不可欠。だが、原始の生物に取って酸素は毒だった。なぜ私達は酸素を必要とする生物になったのだろう? これは“変な生き物”だけが生き残った結果だというが・・・。他にも誰も見たことがないはずの地球の内部構造がなぜ解明されているのか、黒い地層が教えてくれる海の超酸欠事件など、興味深い話が多数登場する。恐竜は隕石によって絶滅した言われるが、それよりも昔、海の生物に絶対的な危機が訪れていた。海の中の酸素が極端に少なくなったのである。それは黒い地層から分析できることなのだが・・・地層が黒くなっている理由に驚いた。もう一つ、第4章の『なぜ、遠足のおやつは“300円以内”なのか』。
便利なことが推奨され、喜ばれる世の中である。不便よりも便利な方がいいと多くの人は考えているだろう。だが、本当にそうだろうか?
本章で紹介されているクラシエの「甘栗むいちゃいました」と「ねるねるねるね」はどちらもおなじみのヒット商品だが、かたや甘栗の皮がすでに剥かれている便利な商品、もう一方は粉末に水を加えて練るという、手間を加えて作るおやつという対照的な商品である。便利なだけが商品の価値になっていないのが分かるが、一体何故「ねるねるねるね」は売れているのか、分かるだろうか?
また、章のタイトルにもある遠足の話。決められた値段内で何のおやつを買うか友達と悩んだという人は多いと思う。ではもし、おやつを買える金額に制約がなかったとしたら・・・? 遠足はより楽しいものになっただろうか、それとも・・・
さらにもう一つパイロットの例。難しい試験に合格し、念願かなって現場にパイロットとして配属。しかし機体にはすでに自動運転の機能が備わっており、パイロットは何もしなくてよいという。この時パイロットはどう思うだろう。一概に何もしなくて楽だと思うのだろうか?
実は便利になったことで失われたものがある。一見不要の制約やあえての不便さから生まれるものに目を向けてみると、そこには「発見」があった。
「常識」だと思っていることを少し違う視点から見てみると、面白いことに気づけるかもしれない。
個性的な先生たちの話はどれも興味深い。早くも続編刊行が決まったようだ。発売を楽しみに待ちたい。