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考古学者が発掘調査をしていたら、怖い目にあった話 2023.9.1

9月号 2023.9.1
啓林堂書店 https://books-keirindo.co.jp/

考古学者が発掘調査をしていたら、怖い目にあった話

 

 はるかかなた昔につくられた遺跡を調査し、新事実や遺物を発見する――考古学者といえばロマンを追い求めて世界を奔走する夢追い人、そんなイメージを抱いていた。だが、それは非常に偏ったイメージであったことが、本書を読んで明らかになった。

 

 今回ご紹介するのは「考古学者が発掘調査をしていたら、怖い目にあった話」(ポプラ社)。

 本書で紹介される三人の考古学者の経験談は、想像を超えてはるかにハードだ。考古学者らを襲う様々な危機は、タイトルからおそらく想像されたであろうオカルトやホラーの類にとどまらない。それでも遺跡に眠る真実を解き明かそうと日々を奮闘する考古学者らの姿は、山登りに励む登山家の姿勢に通ずるものを感じる。精神的に強くなければ、考古学者などとても務まらないだろう。

 本書に収録されている話の一部を紹介してみたい。

 

 海外に長期滞在することになったため、友人が気を利かせて送ってくれたという、ハムとソーセージの詰め合わせ。だが、どこへ行ってしまったのか、発送されたはずの荷物が行方不明になってしまった。

 日本とは異なる海外の配達事情、盗難にあった可能性も考えられる。だが意外にもしばらくしてから荷物は到着した。ただし荷物が届いたのは発送からおよそ一年後のことである。

 荷物が無事に届いたことは喜ばしいのだろうが、折角届いた荷物が別の意味で怖くて開けられない。

 

 次に紹介する話もかなり不可解な一件だ。海外での発掘・現地調査を終え、いざ日本へ帰ろうという時になって問題が発生した。提示した身分証がどう見ても自分のものと違う。一体いつ、見ず知らずの「カルロス」のものと入れ替わったのか――?

 いつ入れ替わったのかは、結局今も分からないままなのだという。

 

 こちらは人によっては耐えられない話。現地の博物館館長にごちそうになる機会を得、仲間と共にテーブルを囲むことになった一行。だが、運ばれてきた料理は・・・

 本書に写真が添えられているのだが、白黒なのが幸いしている。衝撃的なビジュアルの料理もあれば、そもそも食べるという発想が沸かないという食材もあった。

 だが、現地の館長がもてなしにわざわざ用意してくれたものだ。郷に入っては郷に従え。当然断ることなどできない。

 

 他にも、夜遅くまで粘って発掘作業をしていたらお墓の中に閉じ込められてしまった話や、車に乗ったまま砂漠の中に生き埋めになりそうになった話など、ひやりとする話が多く登場する。

 だが、異なる意味で一番怖かったのは各国のトイレの話だ。中でも中国の公衆トイレはすさまじい。驚愕の“水洗”トイレの仕組みを知ったときは開いた口が塞がらなかった。

 

 どきどきしながらもページを繰る手が止まらなかった。考古学者たちの刺激的な日常を垣間見ることができるノンフィクションエッセイである。おすすめ!

<今月の私の一冊>

悪口ってなんだろう

【筑摩書房】

和泉悠/著

  悪口はどうして悪いのか。人を傷つけるから? 悪意があるから?
 もっともらしい答えが色々浮かぶが、その答えは人間社会におけるコミュニティの中で、言葉が果たしている役割に深く関わっていた。
 どこからどこまでが悪口なのか、悪口は軽口、批判とはどう違うのかなどについても、本書は比較、検証を行う。
 悪口とどう付き合っていくかの考えるヒントを与えてくれる一冊。
 悪口から人の本質について迫る。

ミニコラム「私と本」

≪今月の担当≫ 外商部 社員 表野弘樹

夏休みの宿題で出された読書感想文をAIに書かせることが話題になりました。“AIが読書感想文を書くことについては、効率性や正確性などの利点がある一方で、人間の感情や主観を表現することができないため、賛否両論ある。”
 実は“”内の文章はAIに「AIが読書感想文を書くことについての賛否を50字以内で」と聞いた結果です。一昔前には宿題代行サービスというものも話題になりましたが、AIに仕事を奪われてしまったようです。

Chat&Chat

 

本の日焼けを防ぐため、オビは捨ててしまうことが多かったのですが、趣向を凝らしたものは残しておくことが増えました。焼けないよう、書店のカバーをかけたままにしているのですが、今度は本の居場所を見失いがちです。

◆外商部おすすめの児童書・奈良本のご紹介◆

啓林堂書店ホームページ・外商部ページ( https://books-keirindo.co.jp/gaisyoubu/ )にて、
更新中の「外商部おすすめの奈良本」「おすすめ児童書」をご紹介!

おすすめ児童書

ぼく、お月さまとはなしたよ

【評論社】
フランク・アッシュ/絵・文 山口文生/訳

 クマくんはお月さまに誕生日の贈り物をあげたくて、空のお月さまに向かって話しかけます。
 「こんばんは!」「・・・」
 返事がないのでもっとお月さまに近づいて話しかけようと山の頂上まで来ました。
 「こんばんは!」「こんばんは!」
 やまびこではね返った言葉をお月さまが答えてくれた、と思って楽しく会話をするクマくんがとてもかわいいです。

外商部おすすめの奈良本

〈文庫〉覇王の神殿

【潮出版社】
伊東潤/著
9月20日発売予定

 かつて日本の中心地であった飛鳥(現在の奈良県明日香村)を舞台に、蘇我馬子の国づくりにかけた生涯を描く。時は570年、病床に臥す父・蘇我稲目から強大な豪族・蘇我一族の頭目の座を受け継いだ馬子。以来、大王に次ぐ大臣として、日本に渡ったばかりの仏教に根差した国家を目指して邁進していく。しかし、理想のためには謀略や暗殺も辞さず、馬子は血塗られた覇道を歩んでいくのであった――。宿敵・物部守屋との争い、日本最古の女性天皇・推古との知られざる関係、天才・聖徳太子への嫉妬と恐れなど功罪相半ばする日本最古の〝悪役〟の実像とは。

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