5月号 2025.5.1
啓林堂書店 https://books-keirindo.co.jp/
“優しさにひとつ気がつく ×ではなく○で必ず終わる日本語”
SNSでこの短歌を知った方も多いのではないだろうか。ラインで中高年世代とやりとりをする際、句点をつけて文面が送られてくるのは威圧的で怖い、怒っているように感じると、若者世代から飛び出した意見が事の発端である。マルハラスメント(マルハラ)という言葉も飛び出し、一時期話題になっていた。
その渦中にあって、瞬く間に拡散されたのが冒頭の短歌である。
歌人・俵万智のこの短歌は、幅広い世代の共感と支持を集めた。ラインなどの通信手段を使い、短い文章でテンポ良くコミュニケーションをとるのが当たり前の若者世代、パソコン・携帯でのメールを使い出したのもまだ最近、推敲した文章をしたため、文通で何日もかけてコミュニケーションをとっていたという中高年世代では当然意見は異なるだろう。大事なのはお互いの事情、状況を知り、理解を深める努力をすることだ。
今回ご紹介するのは、「生きる言葉」(新潮新書)。著者、俵万智の目から見た現代の言葉の有り様が様々な視点から語られている。
例えば冒頭に登場したラインや、SNSに関する話題。現代のコミュニケーションツールとして、言葉の割合がとても高くなっているのは、皆さんも頷くところだろう。
我々は言葉に対してより慎重な態度で臨まなければ、と意識をしているはずだ。が、それでもトラブルが起きてしまう。
SNSでの発信は不特定多数に向けられていることが多い。嬉しい反応が返ってくればいいのだが、残念ながら発信者を落胆させるような反応も存在する。「クソリプ」と呼ばれるものがその一つだ。
「クソリプ」とは何か? 自らも悩まされるという著者が、分類図よりどのようなタイプが存在するかを分析し、自らを守るためどうすればよいかを考察する。
著者の興味は多岐に渡る。例えば「ラップ」について。はじめは相手を貶す言葉を使うため、ラップバトルにあまりいい印象を持っていなかったそう。だが、後に「平和な言葉のバトル」と認識を改める。その経緯、そして韻を踏んで展開していくラップの言葉の妙と奥深さが熱く語られる。
短歌を詠むAIの存在について語られている章では、創作に関する著者の考えが伺い知れる。受け手と作り手の視点の違いに気づかされ、少々意外な印象を受けた。AIは脅威? それとも――
なお、代表作「サラダ記念日」について、意外にも著者には気に入らない箇所があるのだそう。言われてみれば、と納得はするのだが、言葉を慎重に扱う詩人ならではの視点だ。詳細は本書にて。
著者の言葉に対する情熱に終始圧倒されるが、章の合間に挿入される、著者の短歌にも私はぜひ注目して欲しい。
特に私が本書で一番気に入っている短歌はこちら。
“つかうほど増えてゆくもの かけるほど子が育つもの 答えは言葉”
「いつもひらめいている人の頭の中」
【幻冬舎新書】
島青志/著
「ひらめき」や「創造性」は誰もが平等に持っている――
この言葉を聞いて、あなたはどう感じるだろう? そんなことを言われても、どうせ自分とは無縁だろう、そんな風に考えなかっただろうか?
本書はまず無意識のうちに、自らの可能性に蓋をしてしまっていること、自分自身にリミッターを設けてしまっていることに気づくということから始めよう、と呼びかける。
第一章では私たちのひらめきを邪魔する習慣や考え方について考える。「一番を目指してはいけない」「自分の考えに自信を持ってはいけない」など、今まで常識だと思い込んできたこと、教わってきたことに相反するものが多数あげられている。その理由とは?
大切なのは「もう遅い」と限界を決めず、脳が持つ可能性を信じることなのだそう。人間の脳についても自然と興味がわく一冊。
≪今月の担当≫ 外商部 社員 上田輝美
先日、400枚入りティッシュペーパーの空き箱を再利用し、簡単なブックスタンドを作る、というWEBの特集記事をたまたま見つけた。 半分に切った空箱を底と背で上手く組み合わせており、収まりも良さそうに見える。が、ここで一つ素朴な疑問が浮かぶ。
単発の新書や文庫を並べるにしても小さなブックスタンド。かなり厳選しなくてはならないだろう。できるのか? 私は日によって読みたいものが変わる人間だ。厳選できたとして、次の日には並べたい本がおそらく変わっている。
結論。これは私の求めているものではないな……ため息をひとつつき、そのままページをそっと閉じた。
いい加減本を片付けないといけない、とずっと思っている。3月の半ばからなので、かれこれ一か月半以上は経つのだが。
◆外商部おすすめの児童書・奈良本のご紹介◆
啓林堂書店ホームページ・外商部ページ( https://books-keirindo.co.jp/gaisyoubu/ )にて、更新中の「外商部おすすめの奈良本」「おすすめ児童書」をご紹介!
おすすめ児童書
『てんとうむしみつけた』
【福音館書店】岡島秀治/文 稲田務/絵
見つけたてんとう虫2匹。模様が違う。種類が違うのかな。もっと探してみよう。
この絵本に出てくるてんとう虫は「なみてんとう」で、同じ種類でもいろいろな模様があるんです。
模様の違いを図鑑のように見比べることができます。
てんとう虫がたくさん並んだページの中には「ななほしてんとう」が1匹混ざっています。見つけてみてね。
外商部おすすめの奈良本
『唯識 心の探求12話』
【笠間書院】
多川俊映/著
5月10日発売予定
阿修羅像の寺で知られる奈良の興福寺の元貫首の著者が教える「唯識」の入門書。複雑で難しい唯識哲学を諸仏典や諸文芸などでイメージを呼び起こしながら理解を深めるため、唯識を初めて学ぶ人も無理なくついて行くことができる1冊。
お問い合わせ窓口
問い合わせフォーム https://books-keirindo.co.jp/contact/本のご予約・ご注文承ります。ご意見・感想・ご要望などお待ちしております。
発 行 (株)啓林堂書店
〒639-1007 大和郡山市南郡山町527-13 TEL/0743-51-1000文 責 (株)啓林堂書店
〔外商部〕 上田輝美啓林堂書店 ホームページ
https://books-keirindo.co.jp※本メールの無断転載を禁じます。
Copyright (C) 2020 Keirindo Shoten. All Rights Reserved.
【関連リンク】
●ホームページ「啓林堂書店 外商部」