最古の船は1万年前から90万年前に登場していた! 最古の地図は、紀元前1万4500年頃前にフランスのラスコーの洞窟の壁に描かれた夜空の地図だった!?
幅広く様々な分野の「はじめて」の内容に触れ、歴史的偉業を取り上げた『なんでも「はじめて」大全 人類と発明の物語』(東洋経済新報社)を今月はご紹介。本書では、生活、健康と医療、移動、科学と工学など、私達の生活に関わる様々な事柄の「はじめて」が、網羅的に紹介されている。
皆さんは世界ではじめて作られたパンの起源をご存知だろうか? およそ3万年前の狩猟採取時代、穀物に水を加えてつぶしたものを石で熱したのがどうやらパンの原形に当たるようだ。
古代エジプト人は紀元前1000年以降には、すでに酵母を用いてパンを発酵させていたというのだから驚きである。紀元前300年頃にもなると、古代ローマではすでにパン焼きが仕事になっていた。
私たちの食卓でおなじみの食パンの形になるまでには、ほかにもきめ細かな小麦粉が必要であったりするのだが、こちらの詳細については、本書をぜひご確認頂きたい。
「第3部 健康と医療」で挙げられている項目には衝撃を受けることが多かった。特に医療については、安全な方法が確立された現代に生きていて本当に良かったと思う。
「血液」の項目では、血液型や輸血の話が紹介されているのだが、その中の「子ヒツジの血」というコラムに思わずぞっとした。
フランス国王ルイ14世の顧問医師だったジャン=バティスト・ドニ。彼は血液に対して独自の考えを持っており、健康な動物の血を輸血すれば人間の病気を治すことができると信じていた。そこで彼はある“実験”を行うことにする……今では絶対やってはいけないことが行われていたようだ。
なお、はじめての全面輸血が実地されたのは1840年のイギリス。当時はまだ成功するかどうかも不透明な状況だった。そう聞くと余計に恐ろしい。
「手術」の項目では麻酔が生まれる前の歴史が紹介されている。歴史はかなり古く、フランスの洞窟で発見された7000年前の骸骨によって、穿孔手術と切断術が最初に行われたのは石器時代だったと分かっているとか。麻酔の前? と気になるところだがこちらも詳細は本書をどうぞ。
紹介されている一つ一つの項目の記述はけして多くはないが、収録されている項目の数が本当に多い。著者も「序」で触れているが、通読して読むよりも、辞書や百科事典のように気になる項目を読むのが適切だろう。これに配慮し、目次や巻末の索引から引いて、興味のあるページから引けるようにしてあるのも嬉しいところだ。
産業化以降の発明品だと思っていたものの多くは大昔の人々の創作を再発明したり、改良したりしたものだったのも驚きである。
訳文であるため多少読みづらい箇所はあるが、それをカバーするだけの面白い話がたくさん紹介されていた。ありとあらゆる「はじめて」が詰まった一冊!