「日本各地の方言を大切に残したい」という著者の思いから誕生した本書は、「旅の絵本」などで知られる画家・安野光雅の新しい試みである。題材は「蟻とキリギリス」や「狼少年」などで知られる古代ギリシャで生まれた説話集 「イソップ物語」。動物を主人公にした寓話である。
方言のため、慣れ親しみのない地方の言葉は少し読みづらいところもある。だが、各地方の方言で語られる物語は生きた言葉の印象を強く与える。親しみ、迫力……方言が普段目にする標準語とはまた別の独特の味わいをもたらしている。
最後の章に収録されている「獅子と狐の事」は、様々な動物たちが獅子を見舞う中、なぜ親交の深い狐だけ家を訪れなかったのか、という話。親交が深かったゆえの理由に納得と衝撃が走る内容である。
なお、「下心」として物語の最後に添えられている著者の見解、コラムで語られる著者と「イソップ物語」との出会いにも要注目。
読んでみると意外と知らない話も多かった。イソップ物語を読み返してみるのも面白いのかもしれない。