先月より発売を心待ちにしていた本がついに発売された。
ご紹介するのは『100万回死んだねこ 覚え違いタイトル集』(講談社)。福井県立図書館にて、図書館利用者から実際問い合わせのあった本の覚え違いタイトルを書籍化したものだ。福井県立図書館のホームページでも「覚え違いタイトル集」というページで確認することができるのだが、書籍になって解説がついたのが嬉しいところ。本の内容紹介は勿論、利用者の間違いどころに共感するところもあって、興味をそそられる内容になっている。
本書で取り上げられていたタイトルの例をいくつか紹介してみたい。
まずは、本書タイトルにもなっている「100万回死んだねこ」。こちらは皆さんご存知の「100万回生きたねこ」が正しいタイトルだ。「100万回死んで、100万回生きているので、あながち間違いではありません」と利用者に寄り添う解説の姿勢が優しい。こちらは情報が比較的正確で、タイトルにもほぼ間違いがなかったパターンだが、別パターンとして「100日後に死んだ猫」も存在しているとのこと。途端ワニの影がちらつくが、こちらはコミックスなので書店をご利用頂きたいところ。最近話題になった本とタイトルが混ざってしまうパターンは他にもいくつか紹介されている。
次にご紹介するのは一見正しく見えるけれど・・・というパターン。「蚊にピアス」。見過ごしてしまいそうになるが、よく見ると漢字が間違っている。正しくは「蛇にピアス」。利用者に相談を受ける司書も、探しものを提供して一息ついたあとに、あらためて見返していて初めて気づいた、ということが度々あるようだ。思い込みには要注意である。
本書には実に様々なタイトルが例に取り上げられているが、よく登場するのは村上春樹の本だ。「1Q84」「ねじまき鳥クロニクル」など、一風変わったタイトルが多く、勘違いも発生しやすいようだ。「そば屋再襲撃」には思わず吹き出してしまった。正しくは「パン屋再襲撃」。洋が和になった過程が気になる。村上違いで、村上龍の本を村上春樹の本だと間違えてしまう利用者も多いようである。
なお、私が頭を抱えたのは「ウサギのできそこないが2匹でてくる絵本」という問い合わせだ。有名な絵本だが、みなさんは予想がつくだろうか? 本書の構成は後ろのページになればなるほど、本を探し出す難易度が高くなっている。ぜひ、本書を読んで確認してみてほしい。司書のずば抜けた本の探索能力の高さに思わず驚嘆してしまうものがしばしば登場する。
巻末では普段あまり知られていない図書館の活用方法や司書の仕事についての紹介も。検索機では探している本が見つからない! そんな時、図書館のレファレンスサービスを気軽に利用してみようかな、と思わせてくれる内容だった。おすすめ!