11月号 2025.11.4
啓林堂書店 https://books-keirindo.co.jp/
今回ご紹介する本は「なぜ人は穴があると覗いてしまうのか 人を“その気”にさせる仕掛学入門」(幻冬舎)。
「仕掛け」とは、人に何かを強制したり、損得勘定に訴えたりする方法ではなく、人の「やりたい」という気持ちに働きかけ、自然に行動を促すしくみのこと。こうしたしくみを体系的にとらえ、学問として発展させたものを「仕掛学」と呼ぶのだそうだ。
具体的には、ゴミ箱の上にバスケットボールの籠を設置し、ゴミ箱に気づいた人がついゴミをシュートしたくなるようにしてみたり、真実の口を模した手指消毒器を設置し、つい口の部分に手を入れたくなるようにしてみたり、といったものが挙げられる。ゴミ箱はきれいにゴミを捨ててもらうことが、真実の口型手指消毒器は手を消毒してもらうことが目的で、いずれもゴミ箱にゴミを捨ててください、また手を消毒してくださいと訴えるよりも得られる効果が大きかったそうだ。
何か課題を解決したいと思った時に合理的な人ほど正論を述べ、人々へ行動を促そうとする。だが、正しいと分かっていても行動できないのが人間だ。昨今よく話題に登場するAIも課題解決の最短距離や正しい答えを述べてはくれるが、果たしてそれで問題がすぐさま解決するかというとそうではない。また、世の中にはデータになっていないことの方が多く、全てをAIに頼るには限界もある。
社会課題を解決するには、できるだけ多くの人に行動してもらう必要がある。正論だけでは解決できないのである。
仕掛けのポイントは自然な形で人の興味をそそり、つい自分でやってみたくなるシチュエーションを作り出すところにある。つい行動してしまった人でも後で嫌な思いをすることがなく、くすっと笑えたり、納得できたり、楽しい気持ちになれるところが良い。
仕掛けを受け入れられやすくするためにはユーモアが重要だと著者は語る。他にもこんな例が紹介されていた。
健康のために運動しましょうと言われ、明日からジョギングしたり、積極的に運動を頑張ろうと思える人は多くない。頑張れる人は最初からちゃんと運動している人で、それ以外の人は何かもっともらしい理由をつけて、極力運動するのを回避しようとするのではないだろうか。(例に漏れず私もそうだ。)
本書では健康促進のために階段にピアノの鍵盤を描き、階段利用者を増やした事例が紹介されている。鍵盤を踏むと実際に音も鳴るため、つい自分で鍵盤を音を鳴らしてみたくなる。階段を往復しているうち、健康にもなれて一石二鳥である。
また、コロナ禍で人との接触に世の中が敏感になっていた中、マジックハンドによるティッシュ配りで、普段よりも多くのティッシュを配布することに成功した事例も紹介されている。不意の非日常感と意外性が人々の興味をそそったのであろう。
本書では他にも、著者が街中で見つけた楽しい仕掛け(第3章)と、誰でも仕掛けのアイデアが見つかる6つのコツ(第4章)が解説されている。仕掛けを考案するのは難しそうだが、意外にも日常にそのタネを見出すことができるようだ。おすすめ!
「選ばない仕事選び」
【筑摩書房】
浅生鴨/著
“仕事選びに正解なんてない”。 そもそも私たちはどんな仕事があるのか、実はほとんど知らないからだ。 また、どんなに自分が興味のある仕事でも、自分自身に適性がないということもある。 本書は、仕事なんて本当はやりたくない!を公言している著者が、今までとは少し違った視点から、仕事や働き方について読者と共に考えていく構成になっている。 進路や就職のことを先生や親に言われ、焦ったり悩んでいる学生さんには特にオススメしたい。今より広い視点で仕事を捉えることができ、心の余裕をもって自分の将来について考えられるようになるのではないだろうか。
≪今月の担当≫ 外商部 社員 上田輝美
先日、小学生の男の子が図書館で借りた「かいけつゾロリ」を片手に、ご機嫌に登校している姿を目撃した。私も小学校の頃に楽しく読んでいたシリーズなので、今も親しまれていると思うと何だか嬉しい。シリーズの中で特に記憶に残っているのは暗闇で光る本。作中のある重要なキャラクターが蓄光塗料で描かれており、明るいところから暗いところに本を持っていくと絵が浮かび上がるようになっているのである。 久々に読み返してみようかと思ったが、当時のお気に入りの本はまとめて保管してあり、他の本も読み返したくなるのが目に見えている。まとまった時間の捻出が必要だと思いつつ、早一か月が過ぎ・・・
先月は読書の秋だと浮かれていたのに、あっという間に寒くなってきました。朝晩の冷え込みもですが、風が冷たい! 通勤電車の待ち時間に本をよく読むので、まだ寒くならないで欲しいなと思いつつ、天気予報の最低気温と日々にらめっこをしています。
◆外商部おすすめの児童書・奈良本のご紹介◆
啓林堂書店ホームページ・外商部ページ( https://books-keirindo.co.jp/gaisyoubu/ )にて、更新中の「外商部おすすめの奈良本」「おすすめ児童書」をご紹介!
おすすめ児童書
『のらねこノラ』
【ポプラ社】すげいずみ/作・絵
のらねこのノラとおばあちゃんが秋の公園のベンチで出会います。 真っ赤なセーターを着ているおばあちゃん。何枚もセーターを着ているのでまんまるです。 おしゃべりをしているとノラの爪がおばあちゃんのセーターに引っかかって・・・ 二人のあたたかな出会いは、セーターの赤や、紅葉の黄色でふんわり描かれています。
外商部おすすめの奈良本
『古代国家の歩み 倭から日本へ』【講談社】吉田孝、大隅清陽/解説11月13日発売予定
「日本的」世界は、こうして生まれることになった。大陸の統一帝国出現は、倭と呼ばれる小国を政治変革へと突き動かす。彼らは緊迫する東アジアを生き抜くべく、律令という先進的統治システムを必死に学び、土着的な氏族制社会の上に接合させた。「日本的」な国制と文化は、なぜ、いかにして生まれたのかを深く問い、大化の改新からの二五〇年の骨格を鮮やかに描き出す、不朽の歴史像。
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