ささいな日常の謎を数学的視点から読み解く『まるさんかく論理学 数学的センスをみがく』(中公文庫)を今回はご紹介。
本書は、登場人物の野崎先生が、高校生のRさんとM君と共に討論する形で進んでいく。
左右を反転させる鏡はなぜ上下はさかさまにならないの? 珍しい車のナンバーはゾロ目か連番か? など、日常にも関わる素朴な疑問がやさしい語り口で解説されている。本書に紹介されている問題の例をいくつか見てみたい。
ここに2つの時計がかかっている。両方ともきっかり2時を示しているが、一つは1日に1時間遅れるオンボロ時計、もう一つは半年前から止まっている時計だ。では、この二つの時計のうち、どちらが正確な時計と言えるだろう?
『不思議の国のアリス』の著者で知られるルイス・キャロルの茶目っ気を感じられる回答に要注目。言葉の定義の大切さを改めて感じる問題だった。
次の問いはこんなもの。「私のおじいちゃんのうちの一人は、私の孫のうちの一人と同一人物です」という場合、いくつか答えが考えられるが、現実的でエレガントな解答はどうなるか?
これはスイスで実際にあった話らしい。なお、名前を継いだ、生まれ代わりを本人が主張しているなどではなく、文字通り同一人物だとすると条件がつく。
息子がおじいさんを養子にもらう、孫娘が自分の祖父と結婚する、というのがRさんとM君の解答。これも正解。では先生が示した実在のケースとは・・・?
3人の生徒に先生が帽子をかぶせていく。前からA君、B君、C君とし、帽子は順に赤、白、白になっている。生徒は自分より前に座っている子の帽子しか見えないのだが、先生はまず、C君に「あなたの帽子は何色ですか」と聞く、次にB君、A君の順に同じことを聞くのだが、誰か自分の色が分かった人はいるだろうか? という問題。
この問題にはヒントがある。ひとつは「帽子の色は赤、白の2種類だけ。3人のうち少なくとも1人は赤だということだ。さて、あなたはこの答えが分かるだろうか?
パズル感覚で思考力が養える。単行本が発行されてから文庫に収録されるまでの間に、少々古くなってしまった情報も中には見受けられるが、問題を読みながらじっくり考える楽しさは健在だ。
本書に紹介した問題の答え合わせだけでなく、ぜひ本書を読んで問題を考える楽しさを、ぜひ味わってみて欲しい。