“いま、あなたの目の前に、小さなタンポポが咲いているとします。
そのタンポポはどんな姿をしていますか?
できるだけ「完全なタンポポ」を「5秒間」で思い描いてみてください。” (本文より抜粋)
今回ご紹介するのは、『自分だけの答え」が見つかる 13歳からのアート思考』(ダイヤモンド社)。
冒頭に登場するタンポポの話は、アートを捉える際の例え話として登場している。
アートと聞くと、おそらく多くの人は絵画や彫刻作品といったアート作品を思い浮かべるのではないだろうか。しかしそれは本来のアートの一部でしかない。例えるなら花の部分だけを見ているにすぎないのである。
冒頭の問いで地面に生えた黄色い花のタンポポを想像した方は、おそらくタンポポの根までは想像していないのではないだろうか。同じように私たちはアーティストが表現した花の部分だけを見て、地中深くまで伸ばされている根には目を向けていない。しかしアートにとっての本質は、興味関心によって伸ばされた根、作品が生み出されるまでの過程の方にある。
アートとか敷居が高い、それに美術は得意じゃなかったから、と敬遠しそうになっているそこのあなた、少し待って欲しい。この本は作品を作ったり、絵画の見方を習う内容の本ではない。作品を作る際の、アーティストの思考についてスポットをあてた本なのである。
著者によると、美術で本来私たちが学ぶべきことは、作品の作り方より、根本にある「アート的なものの考え方=アート思考」を身につけることであるという。本書は例として示されたいくつかの絵画作品を通して、自分の考え方、捉え方を見つめなおしていく。
パブロ・ピカソの有名な言葉に「すべての子どもはアーティストである。問題なのは、どうすれば大人になったときにもアーティストのままでいられるかだ」というものがある。子どもの頃はみな新鮮な視点を持ち、自分の物の見方で世界を捉えていた。だが、13歳前後を分岐点に、それが失われていく。
深刻なのは、人々が「自分だけのものの見方・考え方」を喪失していることに気づいてすらいないという今の現状なのだという。
一見何のつながりもなさそうなことでも、自分の興味関心に素直に目を向けて掘り下げて行けば、いずれ伸ばして来た根はつながる。
本書を読み終えた後は、あなたのものの見方・考え方がきっと根本から変わるだろう。大変読み応えあり。著者の用意している例題にチャレンジしつつ、実際手も動かしながら読み進めることをおすすめしたい。