啓林堂書店メールマガジン

歴史から見る感染症 2020.7.1

7月号 2020.7.1
啓林堂書店 https://books-keirindo.co.jp/

歴史から見る感染症

 今回の新型コロナウイルスの感染拡大は、我々にこれまでの生活や、経済のあり方など様々なことを考えさせる契機を作った。
 冷静な目で今回のような感染症について分析しようとした際、これまで人類が経験してきた歴史を振り返ることは今後の課題をクリアするための大きなヒントになるだろう。
 本書『イラスト図解 感染症と世界史 人類はパンデミックとどう戦ってきたか』(宝島社)では、結核、麻疹、黒死病(ペスト)、天然痘、マラリアなど、度々人類を脅かしてきた多様な感染症が解説されると共に、人類と感染症の歴史が紹介されている。

 

 人類と感染症の付き合いははるか昔、人間が狩猟中心の生活から定住生活へと切り替えたころまでさかのぼる。集合体が一か所に留まり農耕を始めたことで、農作物を溜めおくようになった。それにより食料を狙うネズミも呼び寄せられ、ネズミに付着したノミやダニから感染症が人へともたらされることになったのである。また、人が多様な家畜と共に生活するようになったことも大きい。先のネズミと同じく、家畜から人への感染ルートができたことも原因として挙げられる。
 感染症の爆発的な流行は人口が最低数十万人を超えないと発生しない。だが人類が栄えたことにより、最初は小さな集合体であった村も人口が増加。それと共に皮肉にも感染症に悩まされるようになっていった。繰り返し人類を襲う感染症は、文明の発展によってもたらされた、ある種の「文明病」なのである。

 

 また、感染症は人々の交流と共に運ばれた。シルクロードは他国の素晴らしい文化をもたらしたが、それと共に感染症も各国に運んでいる。
 高い致死率と内出血により皮膚が黒ずんで見えることから恐れられた黒死病(ペスト)は、貨物に混じったネズミなどのげっ歯類を媒介に、シルクロードを通じて中国からローマ帝国へと運ばれたとされる。逆にヨーロッパからは一度かかると完治したとしても一生消えない痕が残るとして恐れられた天然痘や、麻疹がもたらされた。なお、天然痘は中国経由で日本にも流入し、奈良の大仏が建立されたきっかけともなっている。現在自然発生した天然痘は撲滅され、限られた研究室に厳重保管されているという。(兵器利用の危険があるとして今も処理について議論がされているが、こちらは解決策がまだ見出されていない状況である)

 

 現在のコロナ対策に用いられている手法の一部は、昔からのノウハウや蓄積によるところも多い。あらためて見直すことで、歴史に学ぶところの多さを実感する。ただ著者も述べているように、幾度も危機に瀕しながら、人類は脅威に立ち向かい克服してきた。何かと暗い話題で気が滅入りがちであるが、本書は我々に一筋の光を示してくれている。

<今月の私の一冊>

いろはで学ぶ!くずし字・古文書入門 

【潮出版社】 小林正博/著

現在使用しているひらがなは全部で48字。だが江戸時代には、もっと多くのひらがなが存在していた。
こちらは「くずし字・古文書入門」シリーズの第四弾。本書は古文書入門の初歩の初歩と位置づけ、変体仮名をマスターすることを目標に、ひらがな読解に特化している。
例えば「け」。漢字の「計」が元になっているが、現代人の知らない変体仮名も本書では紹介されている。これは「希」「介」「遣」など、別の漢字を元に作成されたひらがなであるため。元になった漢字(字母という)が異なると字形も異なるのである。
もちろん一朝一夕にいきなりマスターはできないが、古文書の例文と表を眺めていると、だんだん変体仮名にも目が慣れてくる。
古文書に興味があっても難しそうで、学ぶにしても最初のハードルが高い…そうして二の足を踏んでいる方に、まず本書を読んでみることをおすすめする。

ミニコラム「私と本」

≪今月の担当≫  外商部 社員 表野弘樹

 エッセイを読むのが好きだ。著者の体験談がメインテーマなので、読んでみるとその人の人柄や価値観が見えてきて面白い。家族の日常やとあるスポーツ選手の人生、クレイジー(誉め言葉)な研究者等、様々な人が執筆しているので、興味のある分野のタイトルがあれば是非手に取ってもらいたい。

 私のオススメは「バッタを倒しにアフリカへ」(光文社新書)

 (以下本文より)さっそうと作業着を脱ぎ捨て、緑色の全身タイツに着替え、大群の前に躍り出る。「さぁ、むさぼり喰うがよい」

Chat&Chat

 かわいい柄のカレンダーやイラストチラシを切り抜き、栞がわりにしている方を発見。いいアイデア! と思いつつも、ずぼらで面倒くさがりな自分にはまず切り抜き作業のハードルが高いなぁ、と早々に諦めました。今持っている栞を大事に使おうと思います。

 

◆外商部おすすめの児童書・奈良本のご紹介◆

啓林堂書店ホームページ・外商部ページ( https://books-keirindo.co.jp/gaisyoubu/ )にて、
更新中の「外商部おすすめの奈良本」「おすすめ児童書」をご紹介!

おすすめ児童書

あついあつい

【福音館書店】 垂石眞子/作

ペンギンが汗をかきかき、涼しい場所を探しています。ひかげ、見つけた!
涼んでいると、それはアザラシの影でした。アザラシも涼みたいよ~!
また、ひかげ、見つけた! 今度はカバの影。次にゾウも現れるけど、まだあつい。
「ザザザーピシャピシャ」海だー! みんな大喜びで泳ぎます。青々とした海、気持ちよさそうです。

外商部おすすめの奈良本

藤原仲麻呂と道鏡 ゆらぐ奈良朝の政治体制

吉川弘文館】 鷺森浩幸/著 7月18日発売予定

 奈良時代、天皇のそばに仕え、臣下ながら政治の実権を持った藤原仲麻呂と道鏡。太政大臣という官僚機構の最高位の地位に登りつめた彼らはいかなる基盤を持ち、絶大な権力を握ったのか。乱を起こし一族滅亡した仲麻呂、皇位に手が届いたかにみえたが失脚し追放された道鏡。二人の人物像と政治背景を軸に、奈良時代の政変と天皇家の実像を描き出す。

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