啓林堂書店メールマガジン

あなたはゴリラですか 2019.10.1

10月号 2019.10.1
啓林堂書店 https://books-keirindo.co.jp/

あなたはゴリラですか

「あなたはゴリラか」という問いに、思わず目が釘付けになった。


 これは著者が学生時代、「あなたの職業適性診断YES・NOチャート」というものを雑誌で見かけた時の問いだと言う。YESを選んだ著者が目にした答えは「あなたはゴリラだ。まず人間になることを考えよう」。
 出題者がどんな意図をもってこんな設問を作ったのか謎が深まるが、著者はこう答えを出している。自分が書きたかったのだろうと。

読みたいことを、書けばいい。 人生が変わるシンプルな文章術 』(ダイヤモンド社)。
 まずはちらりとでも序章を読んでみて欲しい。そこで少しでも続きが気になると思われた方は、集中してじっくりと読むためにもぜひ本を買うことをおすすめする。文字が大きい、空白が多い・・・そんな印象もあるかと思う。だが、それでもこの本は買いである。著者の文体が気に入った方なら絶対損はしない。

 まずは自分が面白いと思えるものを書く。でなければ人が読んでも面白い訳がない。だが、自分が面白いと思えるものを書いてもそれは人に読んでもらえるのか・・・。


 冒頭の衝撃を引きずったまま、本書を読み進めて行くのだが、ボケありツッコミありの著者の軽妙な語り口にぐいぐい惹きこまれてしまう。純粋に読み物として面白い。外ではなく家にいる時にくすっとしたり、ツッコミを入れたりしながら読むのをおすすめしたい。
 あと、最初に注意しておきたいのは、この本を読んでSNSでバズる文章を書く、といったような目論見は早々捨てた方がいいということだ。著者はそこを目的にしていない。そもそも読書とは何かのためにするものではなく、本を読むために読むものだ。読書が好きな私には、著者のこのスタンスも好感を覚えるものであった。

 特に注目しておきたいのは「第3章 どう書くのか」。何かものを書こうとするとき情報収集は必須事項であるが、ネット検索、新書等の情報には扱いに注意が必要だ。ポイントはその情報の出所。著者は一次資料にあたって調べる重要性を挙げている。“言葉とは、文字通り「葉」である。好きなことを好きに書いた葉を繁らせるためには、「根」が生えていなければいけない。それが一次資料である。” と、本文にある通りである。
 とはいえ、どう調べたらいいのか? そんな時に登場するのが図書館である。知っているようで知らない図書館の利用方法が紹介されている。
 思いがけずゴリラ問題から始まった本書は、最後もくすっとしてしまう答えで締めくくられていた。
 ビジネス書らしからぬ体裁で非常に楽しく読めた。良書。

<今月の私の一冊>

こども六法

【弘文堂】山崎聡一郎/著 伊藤ハムスター/絵

話題書の重版分がようやく入荷。
法律はみんなを守るためにある。だが、その法律を大人も理解するのが難しいのが今までの現状だった。
子どもだけでなく、保護者や先生、誰でも読めて、法律とはどんなものかを知ることができるよう、配慮されたのが本書だ。
六法の中でも、商法を除いた特に子どもとも関わりのある刑法、刑事訴訟法、民法、民事訴訟法、日本国憲法、そこへさらに少年法、いじめ防止対策推進法を加え、優しい言葉と、分かりやすいイラストで解説されている。
著者も薦めているが、まずは10分で本書を読み通してみて、気になるところからじっくり読んでみるのがおすすめ。日常生活で、法律的にどうだろうと疑問に思った時、すぐ手に取って調べられるところに置いておくと心強い。また、いじめに悩むこどもに寄り添おうとする著者の姿勢も随所に伺える。

ミニコラム「私と本」

≪今月の担当≫ 新大宮店 店長 中西哲夫

 好きな作家やミュージシャン、好きな映画について人と話すとき、挙げる名前には少なからず、「人からこう見られたい」という意識が働いているように思う。
 「そんなこと全く考えたことがない」という方もおられるかもしれない。でも、「どちらも「好き」だけど、こっちの名前を出したほうが…」という経験はないだろうか?
 私自身、あまり親しくない人との会話では「これを出せば、ちょっとマニアックと思われるかも」というところをあえて選んでいるだろうし、親しくなれば「そう言っておきながら、実はこんなのも好き」と、意外と思ってもらえるであろうチョイスをしがちである。だから、相手が出してくる名前を聞いて「この人は、自分のことを○○だと思ってもらいたいのかも…」とか考えてみたりするのだ。
 …とまぁ、ここまで自分で書いておいて言うのもなんだが、つくづく面倒くさい性格の持ち主だと思う。物事をストレートに捉えずに、いちいちひねくれて考えてしまうこいつが好きな小説家はきっと…。

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 すっかり秋めいてきました。読書の秋にかこつけて、気になる本をピックアップ中です。

◆外商部おすすめの児童書・奈良本のご紹介◆

啓林堂書店ホームページ・外商部ページ(https://books-keirindo.co.jp/gaisyoubu/)にて

更新中の「外商部おすすめの奈良本」「おすすめ児童書」をご紹介!

おすすめ児童書」「おすすめの奈良本」11月号は、10月下旬に更新予定です!お見逃しなく!

おすすめ児童書

おいもができた』【ひさかたチャイルド】中川ひろたか/文、村上康成/絵

表紙のさつまいも。とっても立派でおいしそう。このおいもどんなふうに育ったのかしら?
苗づくりから植えつけ、成長の様子、そして収穫まで写真で紹介しています。
普段見ることができない土の中でさつまいもができていく様子が興味深いです。

おすすめ奈良本
持統天皇-壬申の乱の「真の勝者」
【中央公論新社】瀧浪貞子/著  10月18日頃発売予定

 大化改新の年に誕生した少女は、五歳のときに祖父が自害し、母が心痛の余り亡くなるという悲劇を体験する。十三歳で叔父の大海人皇子と結婚。有間皇子の謀反や白村江の戦いの後、二十七歳のとき、古代最大の争乱である壬申の乱を夫と共に起こし、弟である大友皇子に勝利する。その後は中央集権化に邁進し、それまで兄弟継承相続であった天皇位を父子継承に転換させる。古代国家のかたちをつくった女帝の素顔とは。

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