啓林堂書店メールマガジン

なんかいやな感じ 2023.12.1

12月号 2023.12.1
啓林堂書店 https://books-keirindo.co.jp/

なんかいやな感じ

 “今回の本は、自分の体験や思索を振り返るようにして、この社会に染み込んでいる「いやな感じ」はどういう蓄積物なのかを見つめようとした記録である。…同世代が読めば通じやすい話も出てくるが、特に世代論ではない。主題は史実や思い出ではなく「感じ」である。”―「まえがき」より

 

 なぜか落ち着かない、違和感がある・・・そんな雰囲気を醸し出す表紙に惹かれ店頭で手に取った本が、今回ご紹介する「なんかいやな感じ」(講談社)である。

 読み終えてみて改めてタイトルと本書の内容がぴったり合った1冊だったと感じた。

 

 本書に収録されているのは文芸誌「群像」で連載されていたエッセイ。元々、平成とは何だったのかを語った、橋本治の絶筆論考「「近未来」としての平成」の続きの企画として始まったそうだが、特に意識せずに書いた、とあとがきに著者の言葉がある。

  “「先へ進んでる」という錯覚が生まれている時代” 。「「近未来」としての平成」では平成、あるいは現代をそのように紹介しているそうだ。

 

 これからどうしたらいいのか? そんな不安が常にまとわりついている感覚に、覚えのある方は大勢いるだろう。

 本書は明確な答えを示すものではないが、それより前の段階、漠然と感じていた不安や、世間になんとなく漂う閉塞感、何とも言いようのない気持ち悪さ、違和感のようなもの・・・このような一言では言い表しづらい「なんでこういう感じなのか?」「なんでこういう感じが続いているのか?」を考えるものである。

 

 かしこまった場であればあるほど、まるでひとつの「社会」があるかのように語られる。だが、どんな人もその人の考えてきたことの集積が自分にとっての「社会」になっている。それぞれの思い描く「社会」は異なり、ズレが生じる。だから本書の主題は「社会」ではなく「感じ」なのだという。

 著者の語る体験談や思索には共感できるものもそうでないものも登場するが、決して著者の考えを押しつけるようなものにはなっていない。語られる体験談はかつてどこかにあった原風景を彷彿とさせ、自然と読者にとっての “そうだった”ものを思い出させる。

 読み進めるうちに、不思議と今までぼんやりと抱いていた「いやな感じ」が言語化され、整理されていくのが実感できるだろう。

 

 章が変わるごとに、ずっしりとした感覚が読後感として残っていく。それと共に、なんとなく抱いていた「いやな感じ」はやはり気のせいではなかったと強く意識するようになった。

 

まずはまえがきを読んでみて欲しい。自然と本章にページを繰る手が進むはずだ。

<今月の私の一冊>

悩める平安貴族たち

【PHP研究所】

山口博/著

  一見華やかに思われる平安貴族の暮らし。だがその実態は現代人とあまり変わらず、苦悩する日々を過ごしていたようだ。
 本書では歴史学が見逃している和歌に注目。登場する題材は、恋や花鳥風月ばかりではない。
 「源氏物語」の著者として知られる紫式部は宮仕えの生活が合わず、憂鬱で苦労している様子がうかがえる。嘆くのは紫式部だけではない。左遷が決まり田舎には行きたくないと嘆いたり、今年こそはと思っていたのにまたダメだった・・・と人事異動の発表に落胆したり。気分が滅入ると漏らす平安貴族の姿は、まるで現代の勤め人を見ているようだ。
 嘆きや嫉妬の声を見ていると、いつの時代も人間一緒なのかな、と少し身近に感じられる。リアルな平安貴族の実態に迫る1冊。

ミニコラム「私と本」

≪今月の担当≫ 店舗営業本部 部長 西田大栄

先月のこのメールマガジンの『Chat&Chat』コーナーでご夫婦の会話が紹介されていた。
 新書の新刊コーナーで「このあたりの本はもう全部家にあるし、お父さん読んじゃったでしょう?」と。
 これでふと、高校の頃に担任の先生に言われたことを思い出した。「社会に出たら、毎月出る岩波新書の新刊4点を片っ端から読むように。それが最低限の大人の教養だ。」
 先生ごめんなさい。社会に出て四半世紀で一度も新刊4点を読破できず・・・。
 しかし今からでも遅くない!来年こそは!?

Chat&Chat

 気づけば師走。まだまだ今年は外で本が読める! と11月中頃までは思っていたのですが、あっという間に寒さが厳しくなってきました。
 そろそろ手袋が必要かも・・・と思いつつ、まだまだ抵抗している今日この頃です。

◆外商部おすすめの児童書・奈良本のご紹介◆

啓林堂書店ホームページ・外商部ページ( https://books-keirindo.co.jp/gaisyoubu/ )にて、
更新中の「外商部おすすめの奈良本」「おすすめ児童書」をご紹介!

おすすめ児童書

きょうりゅうかくれんぼ

【KADOKAWA】 

 アレックス・ラティマー/作 聞かせ屋。けいたろう/訳

 

 恐竜たちとかくれんぼするよ~。みんながおにだよ。
 「もういいかい?」「もういいよー!」 さぁ、まずステゴザウルスから見つけてね。
 みんなで探すと盛り上がること間違いなしです。

 

外商部おすすめの奈良本

平城京の役人たちと暮らし発見!

【吉川弘文館】

 小笠原好彦/著

12月19日発売予定

 奈良時代の都・平城京は、政治の舞台の平城宮を中心に十数万もの人々が暮らす場であった。有能な役人を養成する大学や後宮に勤める女性官人の姿や、役人の勤務評価や休暇の実態などはいかなるものだったのか。税金や物資の流通、治安警備、軍隊や騎馬、酒造り、祭祀、疫病流行などのトピックから都に暮らした人々の日常をいきいきと再現する。

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