啓林堂書店メールマガジン

動物たちは何をしゃべっているのか? 2024.1.1

1月号 2024.1.1
啓林堂書店 https://books-keirindo.co.jp/

動物たちは何をしゃべっているのか?

 あけましておめでとうございます。

今年最初にご紹介するのは、8月の発売以降、順調に版を重ねている「動物たちは何をしゃべっているのか?」(集英社)。本書は野鳥のシジュウカラ観察のため、半年以上を森の中で過ごす研究者と、ゴリラの群れの中で共に生活したこともある京大前総長の研究者が、動物たちの言葉からヒトの言語の進化、さらにヒトの未来にまで語り合った異種対談となっている。

 

動物がおしゃべりすると言うと不思議に思われる方も多いだろう。昔は人間が全ての動物の中で一番優れているという考えがあった。動物には人間ほどの複雑な思考はないとされ、研究もほとんどされてこなかったそうである。

だが、実際にはイヌがヒトより優れた嗅覚を持つように、動物にできてヒトにできないことは数多くある。人間のようなアウトプットの手法がないだけで、動物たちにも仲間との会話や思考はあるのではないか・・・対談の中で度々登場する話題だが、語られている動物たちの姿は、以前まで抱いていたイメージとは随分違うもののように思われる。

 

本書に登場する野鳥のシジュウカラは、鳴き声で仲間たちとコミュニケーションをとる。仲間で集まることを促したり、天敵が近くにいるから注意するよう呼びかけたりするのだが、天敵であるヘビやタカについては、それぞれを示す言葉があるのが特徴だ。これは天敵によって対処方法が異なるためだという。

タカの姿が見えた場合は身を隠すのが正解だが、アオダイショウが木を登って近づいて来ているときに、じっとしていたらそのまま食べられてしまう。そのためシジュウカラは、仲間に天敵の種類まで伝えるのである。

 

なお、シジュウカラは単語だけではなく文法も理解しているという。どのようにして確かめたかというと、お笑いタレント・ルー大柴のルー語をヒントにしたそうだ。「寝耳にウォーター」など、日本語と英語が混ざっている文章でも、ヒトは文法のルールに当てはめれば意味が理解できる。これをシジュウカラの実験でも活用したのである。

実験は冬にシジュウカラがコガラという別の種類の鳥と一緒に群れをつくって生活するタイミングで行われた。シジュウカラは共に行動するコガラの言葉も分かっているそうで、この「コガラ語」と「シジュウカラ語」を混ぜた鳴き声を聞かせ、どのような反応を示すかを観察したのである。文法が理解できているなら、シジュウカラは「コガラ語」と「シジュウカラ語」の混ざった言葉も理解できるはずだが・・・興味深い実験結果の詳細は本書でぜひ、確認をしてみて欲しい。


 このように鳴き声でコミュニケーションをとるシジュウカラ。元々見通しの悪い森に住む鳥のため、視覚だけのコミュニケーションでは不十分で、鳴き声、言葉を発達させた可能性が考えられるという。一方ゴリラなどの霊長類は、平野で見通しの良い環境にあったために視覚に頼ったコミュニケーションに重点が置かれるようになったようだ。それぞれの環境への適応としてコミュニケーション手段が進化してきたと考えられるのだが、現代を生きる人間は、コミュニケーション手段の一つであるはずの言葉の地位が極端に高い傾向にある。そこに問題はないのだろうか? 本書後半、さらに議題は掘り下げられていく。

 

人間は本質的なコミュニケーションを今一度考えなおす時期に来ているのかもしれない。

動物たちの言葉の発祥、そしてヒトの言葉について、対談の中で発展していく話にぐいぐい引き込まれるだろう。おすすめ!

<今月の私の一冊>

世にもあいまいなことばの秘密

【ちくまプリマー新書】

川添愛/著

 「冷房上げてください」と頼まれたとき、あなたは冷房の“設定温度を上げる”だろうか、それとも冷房の“出力を上げる”ために、設定温度を下げるだろうか?
 言葉には意味の取り方によって真逆の意味になってしまうもの、意味が変わってしまうものが存在する。言葉のあいまいさは時に人へ誤解を与え、争いに発展してしまうこともあるが、その一方で、言葉に複数の意味を持たせることで、効率的で円滑なコミュニケーションも可能にしている。
 本書では言葉のすれ違いの事例をもとに、言葉の複雑さや面白さを紹介する。「私には双子の妹がいます」という例、あなたは最初どのように捉えただろう。語り手が双子なのだろうか。それとも・・・? ぜひ、本書で詳細を確認してみて欲しい。

ミニコラム「私と本」

≪今月の担当≫ ジュンク堂書店奈良店 店長 澤田健吉

書店業界が目まぐるしく変化するなかで本以外の商品を取り扱う店が増えている。カフェの併設や雑貨を置いていたりと、本と親和性の高いものが現在は中心だが、これからもどんどん珍しい店が増えていくのではないかと感じる。
 本というものはある意味何でも内包してしまう奥深さがある。そのため実はどんなものとも繋がっていくことが出来る。
 自身が務める店舗もそうなっていきたいが、今後も面白い書店が増えていく事に一人の本好きとして大いに期待している。

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 寒さに耐えかね、ついに手袋を解禁。寒い時期は外で本を読むのもつらいのですが、暖かい部屋の中だと眠くなってしまうのも悩みどころです。

◆外商部おすすめの児童書・奈良本のご紹介◆

啓林堂書店ホームページ・外商部ページ( https://books-keirindo.co.jp/gaisyoubu/ )にて、
更新中の「外商部おすすめの奈良本」「おすすめ児童書」をご紹介!

おすすめ児童書

100円たんけん

【くもん出版】
中川ひろたか/文 岡本よしろう/絵

 ぼくとお母さんはコンビニへ行って、お菓子を100円分選んで買いました。
 そうしたら、100円で何が買えるのか調べてみたくなって、商店街で調査開始!
 肉や魚、野菜は何がどのくらい帰るのかな~。
 比べることによって物の価値の違いに気づかせてくれる絵本です。

外商部おすすめの奈良本

東大寺大仏になった銅 長登銅山跡

【新泉社】
池田 善文/著
1月24日発売予定

 東大寺大仏の鋳造に産出した銅が使われた長登銅山。山口県中央の山中にいまも奈良時代の露天掘跡と採掘坑が残り、山麓では製錬炉の跡が多数みつかり、製錬時にでる滓や銅生産の道具が出土した。800点余の木簡の解読とあわせて、律令国家による銅生産と流通の実態を解明する。

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