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タイム・スリップ芥川賞 2022.2.1

2月号 2022.2.1
啓林堂書店 https://books-keirindo.co.jp/

タイム・スリップ芥川賞

 先日芥川賞・直木賞の受賞作が決まった。
 芥川賞は半年に一度受賞作が選出される日本で一番歴史の長い文学賞として知られている。だが、100年近く続く芥川賞の「歴史」を知る人は意外に少ないのではないだろうか?

 

 今回ご紹介の『タイム・スリップ芥川賞 「文学って、なんのため?」と思う人のための日本文学入門』(ダイヤモンド社)のプロローグは、著者のそんな投げかけから始まる。著者は『もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら』で知られる菊池良氏だ。

 

 本書の構成は、普段小説を全く読まない少年が、文学好きで少しおっちょこちょいな科学者のおじいさんに連れられて、歴代芥川賞受賞作家たちの当時の様子をタイム・マシンでのぞきに行く、というストーリー形式になっている。
 作家たちに干渉して歴史改変にならないように注意しながら、少年とおじいさんは時代を超え、各時代の作家たちが集う場所へと向かう。作品の生まれた時代に行くことで、時代背景や作家の人となり、交流関係などを知り、少年は少しずつ作品への理解を深めていくことになるのだが・・・

 

 一番初めに登場する芥川賞作家は石原慎太郎。芥川賞受賞作である「太陽の季節」の太陽とは太陽族のこと――と聞かされても、いまいちピンときていない少年に、おじいさんは俳優で弟の石原裕次郎との話も絡めて解説を加えていく。途中、うっかり石原慎太郎本人と顔を合わせてしまうようなひやっとする場面も織り交ぜつつ、楽しく石原慎太郎を知ることのできる話になっていた。

 

 なお、本書ではほかにも有名な芥川賞受賞作家が数多く登場しており、芥川賞が欲しくても取ることができなかった太宰治のエピソードなども紹介されている。落選が決まった時の太宰の姿が見ていられない。
 また、紹介されているのは歴史的な文豪だけではない。現代でも活躍中の作家も多く取り上げられているので、ぜひご確認頂きたい。

 

 芥川賞は文学的な要素が強く、どうしても最初のとっつきにくさを感じて…という方でも気軽に読める。
 本書をきっかけにもっと作品のことをくわしく知りたい! と思われた方は、作品の大まかなあらすじがコラムにまとめられているのでこちらを参考にしてみてほしい。

 

 「書かれた文学は作品として残り、それを読んで刺激を受けたつぎの世代が、またそのつぎの世代に読まれる作品を語りついでいく」とする本書の一文が、これまでの文学、そしてこれからの文学について読者に考えさせる。
 面白くてつい一気読みしてしまった。おすすめ!

<今月の私の一冊>

東大名誉教授がおしえる!建築でつかむ世界史図鑑

【二見書房】 本村凌二/監修

 ピラミッド、パルテノン神殿、タージ・マハルなど、様々な建築物から世界史の全体が見渡せるようになっている一冊。
 視覚にもわかりやすい豊富な図説、詳細に記された解説は、建物物の名前は知っているけれど作られた時代背景はよく知らない、という方にも読み応えのある内容となっている。なお、見開きページの下の部分にはちょっとした豆知識も掲載されているので要注目。各章のはじめのページに載っている世界地図に、主要建築物の場所が示されているのも嬉しいところだ。歴史に興味・自信のある方はより楽しめるのではないだろうか。ぜひご一読を!

ミニコラム「私と本」

≪今月の担当≫ 学園前店 店長 澤田健吉 

 コロナ禍が続くなかで本というものが見直されてきているように感じる。ただ巣ごもり需要というだけでなく、読書という行為はストレスの低減にもつながると言われている。私自身も本に助けられたと思ったことが過去に多くあった。
 書店は減少の一途だが、本を置いているという観点でいえば近年、様々な場所に本を設置する動きもある。本があると落ち着いた印象を受けるからだろうか。そのような環境が当然であるという社会になればと書店員としては願ってやまない。

Chat&Chat

 

 店頭POPにひかれると、 つい衝動買いをしてしまいます。
 先日買ったのが弓道の文庫。全く弓道経験もなければ運動もできないのに。そして思っていたより難しい! 理解に時間がかかる・・・!
 ページ数は多くないのに進みは亀です。

 

◆外商部おすすめの児童書・奈良本のご紹介◆

啓林堂書店ホームページ・外商部ページ( https://books-keirindo.co.jp/gaisyoubu/ )にて、
更新中の「外商部おすすめの奈良本」「おすすめ児童書」をご紹介!

おすすめ児童書

ぽとんぽとんはなんのおと

【福音館書店】 神沢利子/作 平山英三/絵

 冬ごもりの穴の中には、クマの母さんとふたごの坊やがいます。
 外から何か聞こえてきました。坊やたちはちょっと不安です。
 でも、母さんは、だいじょうぶ、と落ち着かせてくれます。
 その音は、春が近づいていることを教えてくれる音だったのです。あたたかい春が待ち遠しいお話です。

外商部おすすめの奈良本

奈良で学ぶ 寺院建築入門

【集英社】 海野聡/著
2月17日発売予定

 日本には七万以上の寺院が存在する。これらの建築様式は様々だが、その源流は奈良に見ることができる。なかでも工匠の知恵と工夫と技術革新を直に堪能できるのが、唐招提寺、薬師寺、興福寺、東大寺の四寺だ。そこで、建物の基本骨格や建築の基礎知識を説明し、各寺院建築の具体的な造られ方を、図版や写真をふんだんに使いながらわかりやすく解説。そうすることで、各技術にこめられた職人の想いばかりか、天皇・藤原氏や僧侶の権勢・思想といった歴史も見えてくる。建築という視点から、新しい奈良の魅力を照らし出す、今までになかった寺院鑑賞ガイド本。

 

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