啓林堂書店メールマガジン

言語の本質 2023.7.3

7月号 2023.7.3
啓林堂書店 https://books-keirindo.co.jp/

言語の本質

 

 私たちが日常生活を送る上で欠かせない言語。今回ご紹介する「言語の本質 ことばはどう生まれ、進化したか」(中公新書)は、そんな言語の本質を問う。

 鍵は「オノマトペ」と「アブダクション推論」という人間特有の学ぶ力にあった。少し紹介してみたい。

 

 そもそもオノマトぺとは何だろう。

 オノマトペが普通のことばと異なるところは、その言葉が何を表しているかの推測が可能な点だろう。ぐにゅっ、は柔らかいものをつぶした音。じゅわーっ、は何かがおいしそうに焼けている様子。ころんころん、は丸いものが転がっている様子だろうか。このように、オノマトペは私たちの感覚イメージを聴覚媒体からアイコン的に切り取って表現している。

 表現方法としてとても分かりやすく感じるオノマトペ。ただし、非母語話者には伝わらないこともある点には注意が必要だ。分かりやすい例は動物の鳴き声だろう。日本と海外では表現の仕方が異なり、戸惑った経験のある方も多いはず。詳細は本書を確認してみて欲しい。

 

 普通のことばとは一線を画し、少し特殊な特徴を持つオノマトペ。オノマトペは言語なのだろうか。それともジェスチャーなどと同じ仲間? 私たちが日常生活で咳払いをしたり、舌打ちをしたりといった意味を含むが言語ではない行動なども検証材料に加え、体系的に 「言語の十大原則」を満たすかを検証する。私たちが言語以外にも多様なコミュニケーション手段を持っていることに気づかされる内容となっている。

 

 この言語という抽象的で膨大な記号のシステムを、私たち人間は普段当然のように扱っているが、勿論、最初からことばを知っていたわけではない。幼い頃に様々なことばをたくさん聞き、その意味を知りながら、言語としての使い方を学んできたのである。

 子どもがことばを使いこなせるようになるまでの過程に注目した、興味深い検証結果が本書で紹介されている。

 例に登場するのは「もこ もこ もこ」「しろくまちゃんのほっとけーき」など、おなじみの絵本。想像が膨らむオノマトペは子どもの好奇心を大いにそそるものだ。対象年齢に注目してみると、幼い子ども向けの絵本ほど、オノマトペが主体となって多く登場しているのが分かる。これは親や周りの大人が子どもに語り掛けるときも同じで、幼い子どもほど、大人もオノマトペを多用して語り掛ける傾向にあるという。

 

 子どもが言語を学ぶということは、単に単語の音とその単語が表す対象の対応づけを覚えるということではない。言語を成り立たせているさまざまな仕組みを自分で発見し、発見したことを使って自分でも意味を作っていく方法を覚えるということだ。どうやらオノマトペは、子どもが言語を使いこなせるようになるまでの橋渡し的な存在であるようだが――詳細は本書にて。

 

 オノマトペ、そしてひとつの意味を拡張し、理論を展開していくアブダクション推論。これらを交え、発達心理学と言語学の視点からさらに言語への理解を深め、人間の根源を探る1冊となっている。おすすめ!

<今月の私の一冊>

世界がわかる資源の話

【大和書房】

鎌田浩毅/著

 電気代の高騰、石油不足・・・日々の生活に深く関わる大事な「資源」の問題を、あなたは正しく説明できるだろうか。
 生活に不可欠な話であるにも関わらず、地球科学的な知識を備えている人は多くない。
 理由は3つ。テーマとして大きすぎて、自分に身近なことと思えないこと、知ったところでその知識を生活でどう活用すればよいかがわからない、そして、ここ20年ほどのあいだ、高校生の大半は選択科目の「地学」についてほとんど学んでおらず、エネルギーや地球環境について持つ知識が中学生レベルにとどまっていることなどが挙げられている。このような状況では、昨今話題に上がる自然や環境問題について、正しく判断していくのは困難だと言えるだろう。
 本書ではエネルギーと環境問題の根底にある自然現象について、地球科学の観点からわかりやすく解説する。まずは何が問題なのかを知るところからはじめてみよう。

ミニコラム「私と本」

≪今月の担当≫ 学園前店 社員 中西哲夫

日々の作業中に面白そうな本に出逢うこともあって、つい「買って帰ろうかな?」と思うことがある。でも僕はそんな時、あえて買わないようにしている。
 普通に考えれば、勤務先で購入したほうが売り上げにも貢献できるし(大した額ではありませんが…)、ほかの店舗で購入したなら、ライバル店の売り上げをあげる事にもなってしまう(くりかえし、大した額では…)。
 でも僕は、休みの日にふらっと立ち寄った書店で、思いがけず見つけた本を購入したいのだ。
 あてもなくフラフラと店内を回り、思いがけず出会った本(それは、あらかじめ買おうと思っていたものでも構わない)を手に取り、レジに向かうという行為も含めて楽しいのだ。
 僕にとってはこれが、本を読む行為とおなじ、もしくはそれ以上に重要なことだったりする。

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 先日、5年ほど前の栞を発掘しました。ロゴが古い・・・!昔の新刊情報を眺めるのも、ちょっとしたタイムカプセル感があって楽しいものです。

◆外商部おすすめの児童書・奈良本のご紹介◆

啓林堂書店ホームページ・外商部ページ( https://books-keirindo.co.jp/gaisyoubu/ )にて、
更新中の「外商部おすすめの奈良本」「おすすめ児童書」をご紹介!

おすすめ児童書

ざっそうの名前

【福音館書店】 長尾玲子/作

 夏の暑い日、太郎君はおじいちゃんの家に遊びにいきました。
 そこでおじいちゃんから道端に生えているいろいろな雑草の名前を教えてもらいます。
 雑草にも名前があるんだね。自分の家の近くにもきっと生えているよ。探してみてね。

外商部おすすめの奈良本

普及版・法隆寺

【草思社】

7月7日発売予定

 

 世界最古の木造建築である法隆寺に込められた、古代日本人の技術と知恵を、豊富なイラストと分かりやすい文章で徹底解説!これは、法隆寺の解体修理にあたった棟梁と、建築史家と、建築科の出であるイラストレーターの三人が協力して、法隆寺がどのようにして建てられたかという難しい問題を解き明かした本です。この本をとおして、私たちは古代日本人の技術や知恵が想像以にすぐれたものであったことを知るでしょう。

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