啓林堂書店メールマガジン

話術 2019.1.1

1月号 2019.1.1
啓林堂書店 https://books-keirindo.co.jp/

話術の神様による、ハナシの極意。

 あけましておめでとうございます。
 今回ご紹介する書籍は「話術」(新潮文庫)。著者は活動写真弁士、漫談家、俳優、文筆家と多岐にわたって活躍した徳川夢声。紫綬褒章・勲四等旭日小綬章の受章者でもある。
 人にとって話すことは日常生活では当たり前のこと。そのためあまり意識もしない。「だれも習わないし研究もしない」。だが、話は「だれでもできるから実は難しい」と、著者は強調して言っている。

 自分の思っていることを相手に間違いなく伝える。これが話すことの本質だ。
 だが、そもそも“ハナシ”とは何だろう? 一口に話をすると言っても、実は様々な場面が想定される。

 大勢を前にして自分の意見を話すような講演会や演説。同じ大勢でも、その場に登場人物がいるように物語を展開し、聴衆を魅了するのが落語。友人とのおしゃべり、雑談。これも話である。皆さん下らない話ばかりをして時間を無駄にしてしまった、と一度は思ったことがあるのでは? だがそれは違う、と指摘する著者の視点が面白い。気の合う人とのおしゃべりが好きな人は、ますます話が楽しくなってしまう内容となっている。
 大勢に対して一人で、一人に一人で、相手によっても当然話し方は異なってくる。様々な例と共に紹介される話の一場面を想像しながら読み進めて行くと、その奥深さに気づかされる。

 なお、聞かせる話のテクニック、コツのようなものも本書には紹介されているのだが、意外にも話以外の部分で印象が大きく左右される、というのが驚きだった。
 例えば優れた芸術にも共通して言える大事なものは、“マ”(間)。話であれば話をしていない呼吸の間、絵画であれば絵の描かれていない余白の部分。思わずはっとしてしまうような、聞き入ってしまうような上手い人の話は、聞き手に適度な緊張感をもたらしたり、心地よさを感じさせる間があると言う。話のうまい人ほどこの間が絶妙なのだ。
 また、講演の経験も豊富な著者によると、歩き方や礼、聴衆への視線の送り方ひとつで話す人の印象は随分変わるのだそうだ。印象によっては話どころではなくなってしまうこともある。聴衆に耳を傾けてもらうため、どういう姿勢で臨めばよいのか。具体的な例はぜひ本書を読んで確かめてみて欲しい。

 「話し方の教科書」と紹介されていて気になり、つい手にとってしまったのだが、とても内容の濃い指南書だった。まさかヤジの対処法まで紹介されているとは思わなかった。なお、ヤジにも種類があって対処法はそれぞれ異なる。

 素晴らしい技術を習得するには、当然一朝一夕とはいかない。まずは意識をしてみるところから。話す、ということに対して見方が変わる本である。

<今月の私の一冊>

30の発明からよむ世界史

【日経ビジネス文庫】 ¥864

人類は文明の発展と共に、生活を豊かにしてきた。車輪、文字、船舶・・・我々の身の周りのものにはすべて歴史がある。
だが、普段何気なく利用しているものが一体いつからあるのか。どうして誕生したのか。私達が知っていることは意外にも少ない。
私は特にカラトリー(食器)の歴史に衝撃を受けた。皆さんは古代ローマに「アーミーナイフ」があったのをご存じだろうか? 空白の歴史の理由に唸らせられる。
紀元前6000年のお酒の出自から43年前のデジタル革命まで。時代を大きく変えた発明品をまとめた一冊。

ミニコラム「私と本」

≪今月の担当≫ 新大宮店 社員 中村玉樹

「赤塚りえ子「バカボンのパパよりバカなパパ」を読んで」

 旧満州で生まれた人。戦後日本に帰り、当社啓林堂の本社のある大和郡山で少年時代をすごした人。若い時はとってもシャイで二枚目だった人。最初は少女マンガを描いていた人。永遠不滅のマンガキャラクター(おそ松くん、ちび太、イヤミ、デカパン、レレレのおじさん)を作った人、今や日本を代表するお笑いのタモリさんに目をつけ自宅に居候させて世に送り出した人、事務所のお金を2億円も横領して600万円しか戻ってこなかったときもその人をだって仲間だからと恨まなかった人、トキワ荘の中で一番売れるのが遅かった人。それがこの本の主人公 赤塚不二夫さんその人なのです。私の中では太陽の塔を作った岡本太郎さんに並ぶ日本の偉人です。(昔はどこの町にもちび太やレレレのおじさんみたいな人がいたような気がします) では最後に・・・「これでいいのだ」。

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 年末からいよいよ寒さが本格化してきました。暖かいお茶やコーヒーを飲みながらゆっくり読書をしたいなぁと思いつつ、積読本が多すぎてゆっくり読んでいてはとても読み切れそうにありません。まずは去年買った文庫から・・・

◆外商部おすすめの児童書・奈良本のご紹介◆

啓林堂書店ホームページ・外商部ページ(https://books-keirindo.co.jp/gaisyoubu/)にて

更新中の「外商部おすすめの奈良本」「おすすめ児童書」をご紹介!

「おすすめ児童書」「おすすめの奈良本」2月号は、1月下旬に更新予定です!お見逃しなく!

おすすめ児童書

ばばばあちゃんのおもちつき』【福音館書店】 さとうわきこ/作・絵

 雪合戦のあとおなかが空いた子どもたちは、ばばばあちゃんの家へやってきました。
 ばばばあちゃんは子どもたちといっしょに、おもちを作ることにしました。臼や杵がなくてもおもちはできるのですね。
 ばばばあちゃんのアイデア満載の楽しいおもち作り。いろんなおもちも登場。挑戦してみませんか?

おすすめ奈良本
『日本古代の地域社会と行政機構』 【吉川弘文館】 山口英男/著 1月21日発売予定

 古代日本の地域や社会のあり方と行政機構は、どのように歴史的に変容し、相互に関係したのか。奈良時代から平安時代中期の地方行政機構の展開、古代の牧と馬に関する国家の制度と地域における経営の実態、「額田寺伽藍並条里図」の復原的検討、さらに、正倉院文書と史料学の四部構成により考察する。著者のこれまでの研究成果を集成した待望の一書。

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